職人は物を作る専門家、今もなをお客さんとの会話が苦手という職人もいる。
「作り手の話を聞いてみたいけど、何となく話しかけにくい」、そんな経験がある方もいることだろう。
そんな中、瀧澤利夫にとってお客さんとの会話には特別な想いがある。
「自分で作った作品を自分で売ることでお客さんが安心してくれる」と言うように、お客さんの気持ちを大切に、直接作者の言葉を伝えることも職人の大事な仕事だと考えるからだ。
職人として、栄誉ある「日本の伝統工芸士」の認定や、業界初の「瑞宝単光章受章」など、数々の受賞歴の影にはも、そんな匠の想いが隠されているのかもしれない。
実際のやりとりを聞いていると「ここからみると見え方が一変するよ」とか「これでお酒を飲むと格別だよ」など、常に使う人の視点から作品の良さを伝えくれる。
また、お客さんとの会話から、「どんなデザインが好まれる」のか知ることができ、そこから新しい作品のアイディアが生まれるという好循環にもつながる。
個人・法人問わず作品が支持さる背景には、技術を磨くだけでなく、お客さんの話しに耳を傾け続けてきたからこその結果なのかも知れない。
現在でも展示会や講座の講師活動などを通して積極的にお客さんの声を聞き続けている。
とにかく人との会話が好き、
職人仲間からも慕われる気さくな性格は、
瀧澤利夫の魅力の1つである。
今では一般的になった江戸切子のアクセサリー。
これもお客さんとのやり取りから瀧澤利夫が初めて作った作品だ。
あるイベントでお客さんと話をしていると
「大切にしていた江戸切子が割れて悲しい思いをした」という話を聞いた。
瀧澤利夫は「割れてしまった物は元には戻らないが、大切にしてくれた想いまで壊す訳にはいかない」と考え、
ガラスの破片から作った江戸切子のアクセサリーを思い付く。
江戸切子のアクセサリーが生まれた背景には、「お客さんの気持ちを大切に」、そんな職人の優しい気持ちがあったのである。
アクセサリーはお客さんの想いに応えたいという、
優しさがから生まれた奇跡の作品だ。
瀧澤利夫は制作のかたわら、江戸切子の伝統を絶やさず後世に伝えていく活動にも精力的に取り組んでいる。
江戸切子組合 (旧・東京カットグラス工業協同組合)の部長も後任に譲り、今では「一流の職人だけが選ばれる日本の伝統工芸士」17人の中でも最長老。
読売文化センターで開講される江戸切子講座では、
「一流の匠」が指導する講座ということが口コミで広がり
多くの生徒さんが江戸切子を知るきっかけになっている。
毎年開催の「東京グラスウェア・フェスティバル」には江戸切子職人としてただ一人参加し、知名度の向上に努めめている。
2010年にはユニセフ親善大使で女優の黒柳徹子さんの世界観を、オーダーメイド江戸切子で見事に表現。
黒柳徹子さんとのコラボレーションは、世間から注目され、多くのマスコミやブログで取り上げられ、江戸切子の知名度向上に大きく貢献した。
さらに瀧澤利夫の夢は広がる。
「日本だけでなく世界中に広げたい。」
インターネットの普及により海外への発信も可能になった
世界に向けての第一歩としてのネットショップ開店。
まだ道半ばではあるが、北米、ヨーロッパ、アジアなど
世界各国へ江戸切子を届けている。
江戸時代に始まった江戸切子は、
匠の手により世界に広がろうとしている。
世界中に江戸切子が広まる日を夢見て、
瀧澤利夫の挑戦はまだ続く。
黒柳徹子さんも絶賛した日本の伝統工芸士
数々の受賞歴が物語る、最高峰の技
瀧澤利夫
1938年、長野県に生まれる。中学卒業と同時に上京(有)北信硝子に入社、職人としての人生が始まる。
1991年、東京都認定工芸士、2007年 日本の伝統工芸士となる。
1996年からは読売・日本テレビ文化センター横浜で開かれる「江戸切子」講座の専任講師を務め、現在も継続中(2016年で20年間継続)。
また江戸切子体験を通して毎年約300人の小中学生に江戸切子を教える。
2012年には江戸切子職人で初めての瑞宝章を受章、現在も江戸切子の発展に力を注いでいる。
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