江戸切子の美しさに秘められた物語
美を追求し続けた職人が生みだす格別の江戸切子。
美しい作品に欠かすことのできない素材にまつわる豆知識をご紹介
江戸切子の美は素材とカットの融合により生まれる
素材作りには宙吹き・型吹きという製法があり、どちらもガラス作り専門の職人によって作られる。
高温で溶かしたガラスを専用の管の先に付け、息を吹き込み形を整える点は、どちらの製法でも同じだが、型吹きが型を使ってグラスの形を整えるのに対して、宙吹きは型を一切使わず、熟練の技と感覚だけを頼りに形を整えます。
宙吹きは、形や大きさを自由に作れる反面、素材が高価なため生産数が限られ、希少性が高いという特徴もある。(当店ではシャンパングラスや、一部のロックグラスに宙吹き素材を使用)
一方、型吹きも型が高価なため、あらかじめ決まった形の素材に、職人がそれぞれ好みの模様をカットした作品が多いが、瀧澤利夫は別注で型を作り独自の形で作品を作るというこだわりを見せる。
どちらの素材も、手作りであるが故に安定的に仕入れるのが難しく、今までにも素材が入らず販売が中止になった品物が数多くあった。
そんな中で瀧澤利夫は、長年の取引の中からガラス工房と信頼関係を築き、直接、工房から直接仕入れるなどして、切子の生産が止まらないように尽力している。あまり語られることのない江戸切子の舞台裏には、ガラス職人との堅い絆が秘められている。
素材へのこだわりはこれだけではありません。当店では素材にクリスタルガラスを使います。
高級グラスとして名高いバカラグラスにも使われるクリスタルガラスは、透明度と光の屈折率が非常に高く、ソーダグラスの品物と比べると輝きが格別です。
伝統紋様で引き立つ江戸切子の煌めき
様々な伝統紋様を自在に操る技術力を身に付けるには、長い修行と日々の鍛錬が必要だ。「努力し続けることが才能」と言われるように、一流とは厳しい修行を忍耐強く続けた職人のみが到達できる境地なのかもしれない。
技の鍛錬に加え、瀧澤利夫は使う道具にもこだわる。道具1つにつき、カットも1種類。作品のイメージに合わせて道具も増え続け、今やその数は500を超えるまでに達した。入念にメンテナンスされた道具から数点を選び、1つの作品をつくり上げる。
納得いく素材と道具、熟練の技がそろって初めて、美しい江戸切子が生まれる。職人は、手作り素材による微妙な違いを、音や指の感覚だけを頼りに仕上げていく。
カットには高い集中力が必要なため大量生産ができず、手の込んだ品物が1日に3個以上売れると品薄状態になってしまう。特に菊つなぎや籠目といった紋様は、カットが細かく、製作には時間がかかるので、一度、品切れしてしまうとすぐ再販売までに時間がかかることも。
あまり語られることが無かった、作品作りの舞台裏には、素材・道具・技の鍛錬を追求する職人の美への探究心が隠されています。
目に見える美しさの裏に秘められた、職人の心意気を感じていただき、お気に入りの作品をお選びいただければ幸いに思います。